ファントム・スレッド


 Amazonの配信で「ファントム・スレッド」を観る。本当に面白い、かつ美しい映画だった。ポール・トーマス・アンダーソン監督、2017年。

Amazonでは字幕版、YouTubeでは吹替版が観られる。英語の言葉遊びがとても楽しかったので、字幕にして良かった。


舞台は1950年代のイギリス、ドレスのオートクチュールで名を馳せている仕立て屋の男が、とあるホテルでウェイトレスの若き女性に出会う。そこからロマンスが始まる... と思いきやそれだけではなく、段々と英国チックな?ミステリー展開に。

男は仕事に身も心も捧げていて、極めて神経質に、ルーティンを頑なに守ろうとする。それを淡々と崩してゆく女の存在、目線、香り... 彼女は何を知っていて、何を知らないのか?ホラーな感じではなく、あくまで静かに、よく考えたら怖いやつ。おどろおどろしい雰囲気もなく、恨みつらみもなく、誠実な愛がある。だから不可解。不可解な怖さがある。その不可解な怖さ、って幽霊より人間の怖さであり、それでこそ人間というか、人の心の不可解さだと思う。


アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞した作品で、そりゃこれなら獲るだろうというドレスの、ゴージャスというのではない、むしろ静かなる美しさ... 服飾にさして興味のない私でも、オートクチュールでしか醸し出せない気品、ドレスの生地が光と影を通すことで表情を得ること、そしてそれを身に纏う女性の変容を見て、心が動かされた。

そしてこの映画のテーマのひとつである、服はその内側に“隠せる”ということ。言葉や振る舞いを通してそれが映し出されていた。

それからジョニー・グリーンウッド(レディオヘッドのひと)の音楽が本当に良く、この音楽が“心”なんだ!と、はっきりわかるシーンがあって心震えた。

キャストは序盤にちょろっと出てきたジーナ・マッキーが、もうあまりにも美しくて全部持ってかれた感じ...。

多くは語られない。種明かしもない。服があらゆることを隠しているように、言葉のひとつひとつにも暴露がない。

芸術性のなかにほどよくエンタメ性が共存していて終わりまで楽しく観られた。ところどころで見られる、イギリスの風景も美しかった。


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