Sils Maria アクトレス~女たちの舞台~
シネマ・ジャック&ベティにて、オリヴィエ・アサイヤス「アクトレス~女たちの舞台~ (原題: Sils Maria)」。
好きな映画監督はいても特定の俳優のファンではない私、俳優見たさに映画を観るという行為をほぼしてこなかったが、ジュリエット・ビノシュは好きで、予告編の美しさに惹かれて観に行った。
でも本当に美しかったのは、スイスアルプスの山々...シルスマリアを前にして、美を脱ぎ捨てた彼女の微笑だった。
ジュリエット・ビノシュが扮するのは円熟した大女優(ほぼ本人では、という点で彼女にしかできない役)。“老い”を意識せざるを得ない女性の葛藤に主眼が置かれているのかもしれないけれど、むしろ今の時代に好まれているものの安っぽさや薄っぺらさについていけないアーティストとしての姿の方に共感を覚え、それは性別問わず共感できるところではないかなと思う。精神性が時代に合わないことは“老い”なのか、だけどその嗜好は必ずしも年齢と関係しない、ということが分かるシーンもある。一方で、(作中の台詞で言うと)“男性の空想に手を貸す”女優の在り方の終焉も見えてくる。主人公自らの仕事の選択において、それを終わらせようとしていることがうかがえる。
今回、「映画、気象のアート」と題された特集のなかでの上映だった。
気象要素と関係の深い作品を集めた興味深い特集、この映画においては言うまでもなくシルスマリアの絶景。多くの芸術家が愛した地、スクリーンに映し出されているのは風光明媚なリゾートとしてではなく、畏怖、途方もない遠景は死との近さである。息抜きとは正反対、主人公はそこで役を演じる練習を重ね、感情を重ね、自らの過去を重ね、自分自身を苦しみ抜く。
余談だが、スイスの景色にまつわる映画で思い出したのはフレディ・ムーラー「山の焚火」だった。この映画とはまったく違って村社会と血の濃い関係性を描いた衝撃的な作品だったが、あれもまた美しい山々の景色だった。
特集のなかではエリック・ロメールの作品も観てみたい。行けるかな。

