電車と夏の午後
夕方になる前の明るい午後、電車は夏の光を窓にたずさえながら次々とホームに乗り入れていく、つねに滑らかな速さで。黄昏になる寸前の熱と光が、駅に集まっては交差する、都市の神秘的な光景。
電車が電車を追い越していくとき、一瞬、何かがわたしの心を追い越していく。その瞬間は眩い西陽に包まれ、目でも耳でも心でさえも、わたしはそれをとらえることができない。
電車に揺られるのも悪くない、こうした、穏やかな日が少しでもあるのなら、それは時がくれたわたしへの幸福なねぎらいだろう。
もう、夏になってしまったのか。

