まだらな記憶とキッチンペーパー

薬局でキッチンペーパーを買ったが、家に着いたら、持っていなかった。


どこかに置き忘れたのか。しかしどこかに置いた記憶はまったくない。では買ったということ自体が、幻想だったんだな。買ったと思ったけれど、買ってなかったんだ。買ったような気がしただけだ。そう思い翌日、同じキッチンペーパーを買った。その後、ファミリーマートに入ると、店長が私を二度見した。そして言った。


「すみません、もしかして、昨日、同じやつ、買いませんでしたか?」

なぬ。

思わず、買いました、と答える。

「置き忘れてあったので、保管してありますよ。」

なぬ。

親切。

つまり購入は幻想ではなく、私は昨日、薬局の後にファミリーマートに立ち寄り、その時に置き忘れていたのだった。

記憶喪失。


無事に私は、2袋のキッチンペーパーを持って帰った。

まあ腐るものじゃないし、いいか。


世間は言う。人は仕事をしなくなるとボケると。しかし常々、私は反対だと思っている。仕事をすればするほど、私はボケる。仕事に脳のリソースを割くことによって、私の、ミミズの額ほどのワーキングメモリはパンクし、生活が破綻するのである。

それにしても店長、客がキッチンペーパーを持っているだけで、この人同じものを持ってる、また買ったのかな、と咄嗟に分かって、声をかけてくださったのだ。とても優しい、気の利く方だと思う。ありがとうございました。



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